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団塊友情物語
 幼少の頃暮らした鴨川で大変お世話になった藤本敏夫さんが亡くなってもう4年。いつか農村介護を一緒にやろうといった約束が果たせぬまま過ぎ行く時間がどんどん早くなる。
 ふるさとを持たない私にも郷愁めいた感情がこみ上げる地がいくつかあり、鴨川はその一つ特別な場所。藤本さんがはじめた鴨川自然王国に通い始めて10年になる。  
仕事を言い訳にしばらく農作業には足が遠のいているが、先日還暦を越えたメンバーの送別会があって久しぶりに懐かしい仲間と会った。主役の中山さんは現役社会人を卒業した後、第二の人生に料理の道を選んだといって鴨川に入った定年帰農組。メンバーの多くは農作業を楽しみに来るのだが、中山さんははじめから鎌を持たずに食堂でmy包丁ばかり握っていた。そしていつからか、誰もがたよりにする自然王国のまかない料理長になってしまった。
 その中山さんが今度はイタリアへ料理の武者修行に行くというから驚いた。この日の中山さんは、かつておっかなびっくり料理を作っていた頃と違って、今はやりのちょい悪おやじどころか、かなりカッコよかった。なにせ彼のために30人以上が集まったのだから、鴨川での彼をほとんど知らずに同席した奥様もさぞかし驚いただろう。
 パーティ主催者の一人は、藤本さん亡き後王国を引き継いだ歌手の加藤登紀子さん。彼女は、団塊世代のマドンナでもある。かつて学生運動を指揮した藤本さんらを団塊の代表のように思う人もいるが実は違う。ただ彼は団塊世代から絶大な信頼を得た一人。私は晩年の姿しか知らないが、正義感と人情に厚く人間味あふれた魅力的な人だったので、多くの後輩(団塊世代)に慕われたのだろう。未だに藤本さんを酒の肴に40-50がすぐ集まるのだから本当にすごい人だと思う。その藤本さんが、誰よりも登紀子さんの歌を愛した人でもあった。
 人気歌手として超多忙な彼女が中山夫妻のために駆けつけたのだから、さぞかしうれしかっただろう。私はそんな人たちの優しくさりげないこころ遣いがとてもうれしかった。
 さて、登紀子さんといえば歌と酒。会場のスンガリーはロシア料理屋だからワインもそっち方面のものが多い。
 「このワイン美味い」とグルジアワインを褒めたら、高野さんが「ワインのルーツはあのあたりという説があるくらい本場だ」と教えてくれた。すると登紀子さんが「ジョージア・・ジョージア・・・」と「我が心のジョージア」を一節。南部アメリカ、アトランタのあるジョージアはグルジア[Georgia]のこと。カリフォルニアを中心とした米国ワインも大元を辿ると起源はアジアかも知れないと教えてくれた。ヘエ〜7つ。
 スンガリーは藤本さんの娘でやはり歌手のYAEさんのアレンジ。藤本さんの最後のメッセージとなった「青年帰農」の遺志を継いだみつお君と結ばれ、今は鴨川に移り住んでいる。YAEさんの歌声は、登紀子さんとはまた違った個性を持っていて風を呼ぶ歌が素敵だ。多忙な登紀子さんの分まで活躍しているが先日めでたくママになった。今年なかよく姉妹がママとなり登紀子さん一家と王国に笑顔が増えた。
 王国活動は、まだ世間の人たちが環境に関心のなかった頃、藤本さんがたった一人ではじめた小さな活動がどんどん大きくなっていったものだ。その遺志を引き継いで今では多くの人が集う活動に育っている。そこには、尊敬あり、友情あり、あたたかい思いやりもある。時に意見が違って言い争いになることもあるが、例えケンカをしても底には相手を認める気持ちと愛情があるから心配はない。誰も口にはしないが、信頼と友情の絆は青年帰農が本格化した今もしっかり受け継がれている。
 こうした世代を超えた友情が育つ地が、旅の仕事をしていると全国各地に増えていることがわかる。こうした友情の輪が、日本の明るい未来を支えていく。

(Always k/s)
 
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