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今から20年前、海外旅行する60代のご夫婦の方々に、旅行目的は何かと質問することがありました。するとほとんどのご主人が奥様への「罪滅ぼし」とこたえられました。 日本が戦争に明け暮れた青春時代、結婚したものの新婚旅行はおろか祝言さえままならなかった戦後の復興期、より豊かになるためにただただ必死で働き続けた高度成長時代、そして気がつけば定年。
「苦労のかけっぱなしで、ちっとも幸せな思いをさせてあげることができなかった家内への罪滅ぼしで、この旅行をプレゼントしたのです。」「生涯に一度かも知れないけれど、少しでも孝行することができればそれでいい」とご主人。隣にいる奥様は、「主人は根っからの会社人間で、ずっと働きっぱなしだったから、いつ身体をこわすかと心配のしどうしだったんですよ。少しゆっくりさせてあげたいんで、ついてきました」と微笑んでおられました。まだ若かった私の胸には、熱く込み上げてくるものがありました。
近年、身体の不自由な人達も思いきって旅にでかけられるようになりました。彼らとの旅の中では、しばしば「奇蹟」が起こります。動かなかった手を動かし、誰の手伝いもなく自分の力で食事を口に運ぶことができたり、泳ぐことを忘れていた機能が動き出し、プールで泳ぐことができたり。まさに「旅は心身のリハビリ」です。こうした「できないと思っていたことができる」という体験は、その人に「生きる自信」や「チャレンジ精神」を培い、心の変化は肉体を変化させ「奇蹟」となるのだと思います。
先のご夫婦の旅から20年が過ぎ、生涯ただ一度のはずだった海外旅行は、年に一度と欠かぬほど暮しの中に浸透しました。旅はライフスタイルの中にしっかりとその存在を確保しています。 しかし、すでに80歳の声もきこえはじめたかのご夫婦の体力は衰え、私たち旅に携わる者が「いつまでも元気に旅を続けていただきたい」と願っても、不自由となりはじめた身体はこれまで通りには動きません。
「なんとかできないものか?」と考えているうちに、年に10日の旅行をささえる健康な身体は、実は平生の355日を「どうに暮すかによるもの」ということがわかりはじめました。
私はこのような人生の先輩たちが日常生活を「いきいき」とすごすことができるように、必要な情報やサービスを集め、より便利なものを調達し、それらをトータルに提供できる場があったらいいのに・・」と考えるようになりました。
そして、そこに人々が集えば、知恵があつまり、互いに刺激しあい技術も高まる。そんな環境だったら手伝う側の人も育つし、社会がかかえている様々な問題解決の助けになるかもしれない。そうすれば、もっとステキなものが生まれる環境ができる。
高齢な人も身体の不自由な人も、ともに持つものを与えあい互いに活かしあうコミュニティを創ることができれば、そこから人に役立つ技術が生まれ、新しい仕事も生まれてゆくと思います。 あ・える倶楽部の活動を通して、サービスを利用する人も提供する人も、携わった人すべてが個々の生きがいを探り当て、ともに自立し、幸せを分かち合えるような場ができればステキです。
SPIのホスピタリティスタッフの豊富な旅の経験をそこで活かしたいと思います。 |
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