『一般ツアーコンダクター経験者として、トラベルヘルパー業務を行って感じたこと』岡安千絵

私がトラベルヘルパーの仕事に出合ったきっかけを作ったのは、夫がたまたま手に取った雑誌でした。文面をパットみた瞬間、「これが私の求めていた仕事」だと感じました。15年間の海外添乗生活にピリオドを打ったのは、夫の大病が理由です。ただただ入院してる夫を見守り時間ばかりが過ぎていく中、何となく眺めていたチラシにホームヘルパー2級講座の案内がありました。時間だけはたっぷりあった私は即座に申し込み、資格を取得しました。その後、特別養護老人ホームへ就職し、通所介護(デイケア)に配属が決まりました。利用者の皆様は基本自立している方が多く、ご自身の意思で動き、活発な方が多い施設でした。

慣れない介護の仕事で、最初に困ったのは何を話していいのか分からない、会話でした。旅行業しか就いたことがない私にとって話せる内容といえば旅行の事。思い切って温泉、旅行の話を投げかけたところ、その場の雰囲気がガラリと変わり、皆一様に目をキラキラ輝かせ、今まで一番良かった温泉場所、楽しかった旅行、ハプニングがあった旅行等、海外旅行も含め思い出話に花が咲きました。
しかし最後に出る言葉は皆様一様に「今でも旅行に行きたいけど、だれも連れて行ってくれないのよね」「私だけ旅行の時にショートステイに預けられるのよね」等等、その哀しい寂しい言葉に「私が本当にお連れしたい方はこの方達なのだ」と強く感じました。

この強い思いを持って現在トラベルヘルパーとして働いておりますが、実際に車いすの方、高齢者の方と一緒に外へ出てまず最初に感じた事は、目線の違い。
旅行先で訪れたお土産屋さんの商品の配置、レジの高さ、ホテルではタオルの位置、洗面台の位置、窓の位置等多くにおいて、健常者の目線で考えられているという現実。そしてその健常者は車いすの存在にさえ気がつかない。
おしゃれに見せるために敷かれた石畳がどんなに車いすに振動を与えているか。
次に感じたことはエレベータが圧倒的に少ない事。エレベータを探し探し行程を進めるため、通常のツアーより移動に時間がかかる。
またこれは私だけかもしれませんが、添乗中に何度となく「安全が一番、皆様気をつけて下さい・・・」と声掛けをしていましたが、それがいかに薄っぺらい言葉だったかという事。まさかお客様が転倒するなんて考えていない、まさか体調が急変するなんて考えていない。
そのまさかが高齢者、車いすの方は実際に起こってしまう。その原因を作るのがトラベルヘルパーの場合もある事。
添乗員は30名前後のお客様をお連れするのが一般的な事、それに比べてトラベルヘルパーは多くが一対一、人数的に言えば圧倒的にトラベルヘルパーの方が楽だと思っていましたが、安全の面、目線の違い、観光地での移動等、また一対一なのでお客様とのほど良い距離感・・・・常に先を読むことの重要性、そしてまだ私が気づいてさえいない大切な事、まだまだこれから勉強、経験を積まなければわからない事、道のりは遠いです、しかしトラベルヘルパーの仕事が私にとって人生最後の仕事になるよう励んでいこうと思っています。


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