トラベルヘルパーショッキング19 東京坂本さん【輝く笑顔が嬉しくて・・・】

バトンをいただいた大味さんとは第一回のトラベルヘルパー2級の検定試験でお会いしてからのお付き合いです。
向上心旺盛な大味さんの英語に添乗員にと次々チャレンジされる姿に私も良い刺激を大いに受けています。
そして、良い仲間に出会えたことに感謝しています。

*自己紹介
料理上手な夫に支えられ今年でトラベルヘルパー8年目になります。
地元では小、中学生の育成委員としてハイキングやキャンプ、夏祭り、餅つき大会、百人一首大会、サタデイステーション等々で子ども達と忙しくも楽しく遊んでいます。

そして、トラベルヘルパーのお仕事では、人生の大先輩方とご一緒させていただくことで多くの事を学ばせていただいたり、感動をいただいています。

お蔭様で、子ども達からも大先輩方からも沢山のパワーをいただきとても充実した生活を送ることができ、皆様に感謝の日々です。

*トラベルヘルパーになった訳
私は夫の両親と同居していたのですが、お姑さんが外出の際は車いすの生活をしており、その介護を私がやっていました。
お姑さんを見送った後、車いすを押せる事が何かの役に立つのではないかと、ヘルパー2級の資格を勉強することにしました。
そして、通い始めた学校の壁にあ・える倶楽部のポスターが貼ってあったのです。
旅行が好きだった私は、旅行の介助をする仕事があるのを知り「この仕事がやりたい。」と、ワクワクしたのを覚えています。
さすがにいきなりあ・える倶楽部に飛び込む自信はなかったので、まずホームヘルパーを3~4年行った後、あ・える倶楽部の勉強会に通い始め、Eラーニング、実地研修、検定試験と進んで行きました。

*父と介護旅行
実は、ホームヘルパーの仕事をしていた頃、実家の父が脳梗塞で倒れたのです。最初は私自身ヘルパー2級の資格を持っているにも拘らず旅行に連れ出すという発想すら浮かびませんでした。
しかし、あ・える倶楽部で勉強しているうちに父を旅行に連れて行って上げられるかもしれないと思えるようになっていきました。
父は多発性脳梗塞で何回か倒れているうちに母との会話もおぼつかない状態になっていましたが、実家で同居してくれている妹とトラベルヘルパーの資格を取った私の二人が居れば何とかなるのではないかと、伯母の一周忌に父を連れって行って上げることにしました。
法事には沢山の甥や姪が集まってくれ、父に話しかけて下さったのです。
すると、父も話しに答えるようになり、冗談まで言っているのを見て、驚くと同時に嬉しかったです。
大勢からの刺激がとても良かったようです。
本当に旅はリハビリなのだと思いました。
その後、年に二回お墓参りと温泉の旅に行くようになり、父が私の仕事のトイレ介助や入浴介助の練習台になってくれました。
母との会話もできるようになり、亡くなるまで自宅で穏やかに過ごせて良かったです。

*印象に残っている仕事
1『故郷の思い出の場所巡りと妹探しの旅』
会社からもう何十年も音信不通になっている妹さんを見つけたいという依頼があったと言われ、さすがに思い出の場所巡りは何とかなると思うが、住所もわからない妹さんを見つけられるのか?不安が一杯で出発した旅行でした。

ふるさとのなつかしい景色をバックに

故郷の英雄秋山中将の像で

ところが、タクシーのドライバーさんが「名字は何ていうの?本部で調べてもらうから。」と言って問い合わせて下さったのです。
「その名字は2軒だけだから行ってみましょう。」ということで、1軒目に行くとお留守でしたので2軒目へ。ところが、道が細くて車が入れず目の前で農作業をしていた方に事情を話してお家を教えていただこうとお聞きしたところ、「その人なら家の親戚だから電話番号を調べて上げる。」と、すぐに調べて来て下さったのです。
信じられないのですが1日目で妹さんを見つけることができたのです。
今に個人情報保護法がうるさくなっていたら無理だったのでしょうけれど、その時は見つけることができ奇跡が起きたようで本当に嬉しくて興奮したのを覚えています。
翌日お会いして昼食を一緒にとってから妹さんのご自宅にお邪魔してお二人でゆっくりお話しをされていらっしゃいました。

妹さんが幸せに暮らしているか?ずっと心配されていらしたそうで、お会いできて本当に安心されて嬉しそうでした。
ご一緒させていただいた私達も幸せな気持ちにさせていただきました。
残りの日は、安心してゆっくり思い出巡りをすることができました。
トラベルヘルパーと生まれ故郷の懐かしい思い出の地めぐり

2『お面の鑑定の旅』
この旅は民俗学の先生が大学と山陰のお寺のご住職様に宝物殿にあるお面が何時代にどの様な目的で使われていた物か調べて欲しいという依頼を受けられての旅でした。
先生が出発する時に「今日鑑定するお面は摩多羅神や密教に関係するお面だと思うが、この密教のお面を鑑定しに行く日は、必ずお天気が荒れるから見ていてご覧。」と仰っていました。
でも、ホテルを出る時は快晴の青空で私から見るとそんなことは絶対にあり得ないと思う空模様でした。
ところが、お寺に近づくにつれ雲が出始め、ついに雨が降り出し、とうとう雪まで降るという信じられない天気になったのです。
私は背筋が凍る思いでした。
先生は「ほらね。」と、慣れた感じで寒い宝物殿の中で手際よく丁寧にお面の鑑定をされていらっしゃいました。
私は、先生が風邪をひかないようにレッグウォーマーを付けていただいたりカイロにひざ掛けやマフラーなど保温に気遣いながらも、本当なら入れない宝物殿に一緒に入らせていただき珍しい宝物を拝見させていただきとてもワクワク、ドキドキの一日でした。
ホテルに帰る頃には、すっかり晴れ渡った青空で本当にこんなことがあるのかとキツネにつままれた様な不思議な一日でした。
その後、ホテルで大学の教授や学生さんとの報告会にもご一緒させていただき、とても新鮮な気持ちで楽しいお仕事でした。

3『思い出巡りと鳥になる旅』
お客様はセミプロ並みの鳥の写真を撮られていた方で、お元気な時はあちこち鳥を追いかけて旅行していらしたそうです。
この旅には三つの目的がありました。
「一つ目は特に思い出深かった北海道の思い出の地を巡ること」、
「二つ目はセスナに乗って自分が鳥になりたい」、
「三つ目は釧路湿原のノロッコ号に乗りたい」
と言うものでした。

ところが、二つ目のセスナが機体の点検の為乗れないことになってしまいました。
さらに、ノロッコ号も指定席が売り切れで手に入らず、現地でチャレンジして欲しいとのことで、確実にできることは思い出巡りのみというドキドキで出発しました。
しかし、北海道に着くと私の心配は吹っ飛んでしまいました。
介護タクシーが出発すると車窓の景色を見ているだけで目がキラキラ輝き出してここには、こんな鳥が居てどういう鳴き方をするか、どんな色をしているか等の話を次から次へとお話しして下さるのです。
もう嬉しくてたまらないご様子で車窓を食い入るようにご覧になっていました。
その姿を見ているだけで、北海道にお連れしてあげられて本当に良かったと思いました。

残念ながらセスナには乗れませんでしたが、ノロッコ号には一般客より先に乗せて下さった駅員さんや、自由席までお客様をおんぶして下さった介護タクシーのドライバーさんの協力のおかげで、三つ目の願いを叶えて差し上げることができました。

この旅行は手配のコーディネーターさんが細かい所まで事前に手配(エレベターもエスカレーターもない駅では4人の駅員さんを依頼し、ドライバーさんには車いす用トイレのあるスーパーやドラッグストアー等探していただく等々)して下さっていたので、介護タクシーのドライバーさん・駅員さん・宿の皆さん・トラベルヘルパーの皆の力が繋がって本当にお客様が感動し喜んでいただける旅になりました。
私が今までやらせていただいたお仕事の中で特にチームあ・えるを感じた仕事になりました。
お客様は病気の為お話しが思うようにできない方でしたが、ネットのブログをやっていて帰ってから旅行記を書いて下さり、そこにご自分の感動した気持ちを色々綴って下さっていて私自身勉強になることも多かったのと同時に、お客様が感動し喜んで下さったのが伝わってきてとても嬉しく思いました。

野鳥の声、平原、地平線、キタキツネ、温泉、、、北海道を満喫していただきました。
北海道への介護旅行でお客様を真ん中に温かい交流が生まれました。

4『90歳を過ぎても進化できる』
このY様(95歳)は、私がトラベルヘルパーを始めた頃からのあ・えるのリピーターのお客様で何人ものトラベルヘルパーがお世話になっている方です。

Y様を見ていると旅はリハビリ、人はやる気さえあれば元気になれるというお手本の様な方だと思います。
初めてお会いした時は、胃瘻ボタンがありズボンの上げ下げに気を付けながらの介護でした。
まだトラベルヘルパー新人だった私と息子様とで貸切風呂で入浴介助をしながら、介助の仕方や介護グッズの事なども色々教えていただきました。
本当にお客様に育てていただきました。

そのうち、貸切風呂ではなく大浴場に入りたいということになり東伊豆の皆様に助けていただきながら三人介助で大浴場や露天風呂に入るようになりました。

Y様は「私は、良い時代に生まれたわ。皆さんの様な方が居てくれるから大浴場にも露天風呂にも入れるわ。まるでお姫様みたいだわ。。ありがとうございます。」といつも私達が嬉しくなる言葉を掛けて下さいます。

そんな優しいY様は息子様のお蔭で胃瘻ボタンも取れ年に何回もあ・えるを利用して旅に出て下さっていました。
Y様はお会いする度にできることが増えていくので、トラベルヘルパーの間でY様の進化が嬉しくて話題になっていました。
そんな中、息子様が腰を痛め動けなくなってしまったことがあるのです。
すると、Y様はそれまで息子様とお嫁様が夜中交代でやってくれていたトイレ介助を無くし、ご自分で行かれるようになったのです。
すると、筋力が付き始め、さすがに長距離は歩くことはできませんが立位の時間も長く保てるようになり、三人介助で歩かず入っていた大浴場にも手すりに掴まりながら自分の足で歩いて入れるようになったのです。

今では、大浴場でも二人介助で入浴できるようになりました。人って本当にすごいと思いました。
やる気さえあれば90歳過ぎても進化できるんですね。
90歳になってからは、お嬢様ご夫婦とディズニーランドデビューも果たし年2回楽しんでいらっしゃいます。

明るく、楽しく、人に気遣いでき、優しいY様を見ていると私もこんな風に歳が取れたらいいなと思っています。
私の人生の目標でもあります。
これからも長生きして大いに旅を楽しんでいただきたいと思います。
信州あさま温泉へ家族旅行。旅行中の家族の負担を少なくしてみんなで楽しみたい。
家族総勢14人。熱海の花火と温泉旅行に東京と東伊豆トラベルヘルパーが協力してお手伝い
温泉湯上りのステキな笑顔。東京と東伊豆のトラベルヘルパーが息の合った温泉介助でサポートさせていただきました。
長野上諏訪二泊三日 紅葉と温泉を楽しむご家族旅行
93歳沖縄への旅7泊8日。「長いと思っていたけれどもうすぐ帰るのね。帰りが近づくと何だか寂しいわね。」
ディズニーリゾートをトラベルヘルパーと初体験
95歳毎年のお誕生日プレゼントは「夢の国」へ!トラベルヘルパーとご家族みんなでディズニーリゾート満喫の旅

*歌の力
さて、思い出の仕事とはちょっと違うのですが、この仕事をしていて驚かされることがあるので少し触れさせていただきます。
それは、歌の力です。
私はお墓参りや温泉旅行等時間に余裕がある時には、字が大きい童謡や昔の流行歌等の歌の本を持って行きます。
歌える方とは一緒に歌うのですが、お客様の中にはご病気でお話しが思うようにできない方もいらっしゃいますので、その様な時には本を見ながら私が歌うのです。
すると、中には一緒に歌い始めて下さる方がいらっしゃるのです。
最初はちょっと驚きましたが、大好きな歌は歌詞を見なくても歌えるようです。
お客様の中にはこのような方が思った以上に多くて、ご家族の方にお話しすると驚かれることもあります。
また、ある時はほとんど問いかけにも反応されない方が入浴の際に急に鼻歌を歌いだされ、入浴介助のお手伝いをして下さっていたお嬢様方と私も嬉しくなって皆で一緒に声を合わせて歌うという感動もありました。
その他にも、認知症で落ち着かなくなられるお客様で昔から歌がお好きだった方は、家族の皆様と一緒に歌を歌っていると穏やかでいられるということで私もご家族の皆様と一緒に何曲も歌って楽しく過ごしたこともあります。
そうそうカラオケによく行かれるお客様もいらっしゃいました。
この仕事をしていると本当に歌ってすごいパワーをもっていると感心させられることがよくあります。
皆さんもぜひ歌の力を感じてみて下さい。

*今後の目標
お蔭様で、私はお客様からそれぞれの人生のお裾分や感動そして、パワーを沢山いただき充実した日々を送れることに感謝しています。
旅の最中やお別れの時に見せて下さるお客様の『輝く笑顔が嬉しくて‼」このお仕事がやめられず、ここまで来てしまいました。
トラベルヘルパーって本当にワクワクする楽しいお仕事で、大好きです。
これからも安心安全第一で続けて行きたいと思っています。
そして、「オリンピックはテレビで見るわ。」と言っていた実家の母(91歳)が、最近になって「ここまで生きてこれたから、やっぱり東京オリンピックは会場に行って観ようと思うの。」と言い始めました。
そこで、今後の目標としては母と東京オリンピックに行くことを目標にしようと思っています。

2020年オリンピックパラリンピックに向けて「ゆめ旅KAIGO2020」にも、大学生と交流を持ちながら実行委員としてバリア調査等に積極的に参加しています(後列右から5人目が坂本トラベルヘルパー】

トラベルヘルパーのお仕事を振り返っていたらこんなに長い文章になってしまいました。
まだまだ思い出のお仕事は沢山あるのですが、今回はこの位で失礼します。
最後までお付き合いして下さりありがとうございました。

次回は歳は変わりませんが、お仕事では大先輩で気配りや優しさ等お手本にさせていただくことが山盛りの素敵な廣中さんにバトンをお渡しします。


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